颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「昨夜はすいませんでした」
「別に。どうする? また宿を予約する? でもオレしばらく予定が入ってるんだ。来週末はゴルフコンペで泊まりだし、その次の週は異業種交流会の懇親会で遅いし。そうなると泊まりで出かけられるのは来月……」
「そ、それなんですけど。颯悟さんの部屋じゃ、だめですか?」
「自宅ってこと?」
桐生颯悟は目を丸くした。
ああ、失敗した。せっかく彼がセッティングしたお泊まり企画にダメ出ししたようなものだ。せめて言い訳しないと……。
「えっとですね、この前初めて颯悟さんの部屋に入ったときドキドキしたんです。よくよく考えてみたら彼氏の部屋でしたことがなくてですね」
「だって彼はいたんでしょ、ふたり」
「ひとりは実家暮らしで私も実家暮らしで、するのはいつもラブホテルで。北海道の彼は出張で仙台にきたとき彼が泊まるビジネスホテルに潜入といいますか。だから彼の部屋の彼ベッドでするのは超憧れなんです」
「ふうん?」
「だから颯悟さんのお部屋で……そ、颯悟さん?」
桐生颯悟は笑みを浮かべた。
ん? これはどっちの笑みだろう。“みのり大好き♪”的なうれしい顔なのか、“なんなの、みのり”的なあきれた顔なのか。
「へえ、そうなの。みのりって彼ベッドに憧れてたんだ♪」
「ええ、まあ、そうです」
「よかった、みのりの初彼ベッドで。オレ、うれしいな♪♪」
にこにこにこにこ。
ああ、これは悪魔の笑みパターンだ!
「……って言うと思ったの? キミってホントにデリカシーないね」