颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
桐生颯悟に案内されて副社長室に入った。


「ここがオレの部屋」
「うわあああ。広いですね!」
「社長室よりは狭いけど。座って」


中央に置かれた応接セットに向かいつつ、キョロキョロと部屋を見回した。

チャコールグレイの絨毯にスタイリッシュな黒のデスク。角部屋だから窓からの眺望もいい。壁一面に書棚。経営に関する本や法律の本、はたまたヒット家電の本なども並べられている。ガラス張りのブースもあって5、6人なら会議にも使えそうだ。

ライトベージュのソファに腰掛ける。ローテーブルには小さな二段重箱がふたつおいてあった。

ん? 黒の漆塗りの蓋には蘭の花の絵。

蘭花堂特製お重幕の内弁当。

老舗料亭の仕出し弁当で、お値段は一万円を越えるとか。一見さんお断り的なお店で、お弁当も贔屓にしているお得意様にしか出さないとか。だから社内でもこれが出されるのは本社役員定例会の昼食のみというレアもの。

これがあの噂の……。


「これ、どうしたんですか?」
「社長と食べる予定だったんだけど、彼、急用ができて余ったから。キミ、食べるでしょ? いらないなら秘書に……」

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