颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
下のお重にお赤飯が入ってるよ、と言われお重を並べおいた。ふっくらと炊き上がった豆とお米がつやつやと光っている。

すべての素材をきちんと調理している。さすがは老舗。
なんたる贅沢!

コンコン。扉がノックされる音がした。
桐生颯悟は歩きながら、今開けるね、と甘い声を出した。

失礼します、と甲高い声とともに現れたのはふんわりカールの若い女の子。淡いブルーのジャケットにグレーのプリーツスカートは膝丈。白いパンプス。

ケバくもなく質素でもなく、ちょうどいいメイクも好感度・大。

桐生颯悟はそこにおいて、とローテーブルをさした。トレーに冷茶のグラスを乗せていた彼女はこっちにむかってくる。


「みのり、紹介するね。秘書の牧田さん。社長と僕の担当をしてるんだ」
「は、初めまして! 広報部デザイン課の麦倉です」
「初めまして。秘書課の牧田です」


彼女はグラスを置きながらにっこりと微笑んだ。

ひゃーっ、かわいい!
女の私から見ても、かわいい!!

前言撤回。秘書は仕事ができるだけでなく、かわいくなくちゃダメだ。こういう人が社内外で顔になってくれたらみんながうれしい。

その牧田さんが甲高い小鳥のような声で桐生颯悟に話しかける。
どこぞやの社長から電話があっただの、今夜社長が出席予定だった懇親会に出てもらえないかだの、簡潔に、かつ、的確に桐生颯悟に伝えていく。
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