颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「なに浮かない顔してんのさ、花金だってのに。ほら行くよ、クラブ。この近くにいいとこ見つけたんだ」
「私はいい。踊れないし、そんな気分じゃないし」
「ダメダメ~っ。若いもんがそんなんでどーすんのさ? ちゃんと服も用意したから、どう?」
「☆§●※▽■〇×?!」
母から袋から出した服は紫のワンピース。大きくあいた襟には黒の羽飾り。母が着ているのと色違いだ。
「ほら、母さんとおっそろ~い♪」
「ちょ、こんなの着れな……」
そう反論しようとすると背後に気配を感じた。
「こんにちは♪ みのりさんのお母さんですか?」
うっ、この声。
振り返ると桐生颯悟が母に話しかけていた。しかもこれ以上ないくらいの笑顔で。
「ええ、母の米子です。会社の方ですよね? 娘がお世話になっています」
「僕はみのりさんの上司で桐生と申します。お姉さんかと思いました♪ きれいだし、お若いですね」
「やっだあ~っ!、もう」
バチン、母は桐生颯悟の肩を叩いた。
「今日はどうされましたか?」
「この近くにいいクラブを見つけてね、娘と一緒にぱあっと踊ろうかと思って」
「や、やだ! 行かないから! そんな服も着れないし!」
桐生颯悟は母が差し出したワンピースをまじまじと眺めると、私の方を見た。