颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「キミ、分かってる? オレと結婚するってことがどういうことか。オレはいずれ父の跡を継ぐ。つまりイエロードット株式会社の社長になるんだ。そしたらキミは社長夫人」
「社長……夫人……?」


ああ、思い出した。早百合さんの台詞。“みのりさんは桐生さんの……”

あの台詞の続きはきっと……お荷物。
私は桐生颯悟のお荷物ってことだ。

桐生颯悟が私とのケッコンを躊躇する理由はこれだったのか。
体中の力が抜けてぐったりとうなだれる。


「ということは、つまり私は夫人の器じゃない、と……そうですよね……確かに私じゃ……仙台のずんだ娘ですし……」
「誰もそんなこと言ってないでしょ?」
「言ってなくても思ってますよね?」
「ホント、バカ?」


桐生颯悟はグラスに残っていたビールを一息で空け、大きくため息をついた。空っぽのグラスを顔の高さにあげ、おかわりをオーダーする。

その横顔はあきれているような、でも真顔にも近いような。


「結婚したらオレと一緒に会社の舵取りをしていくんだ。その覚悟はあるの? 会社に何かあれば、真っ先に矢面に立つ覚悟は出来てるの?」
「矢面、ですか?」
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