颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「ときには自分を犠牲にしなくちゃいけない。オレもキミを犠牲にするときも出てくると思う。それは会社を守るため、社員たちを守るため。それでもオレの隣にいたい?」


隣にいる桐生颯悟は私の顔をのぞきこんだ。
いつものあきれ顔でもなく、意地悪に笑うわけでもなく、真剣に真面目に。鋭い瞳で私の心を射抜くように。

見つめられて、私はドキドキした。
それはいつもの恋のドキドキではなく、違う何か。


「オレは耐えるしかない。もう決まっていることだから。でもみのりには選択権があるんだ。オレの隣にいる重責に耐えられるか耐えられないかじゃない。耐えたいか、耐えたくないかなんだ。分かる?」
「耐えたいか、耐えたくないか……ですか」


桐生颯悟の言わんとすることが分かった。これから起こり得るであろう嵐に一緒に立ち向かう気持ちがあるのかないのか。予測不可能な嵐に向かって。

そんな先の未来のことまで考えていてなんて。

じーっと私を見つめていた彼は、気づいたように目をそらし、自分の膝の上で指を組んだ。


「そんなこと考えたら、みのりにとってどっちが幸せか、分からなくなって……」

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