颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
*―*―*
果たして翌日、土曜日。
サトーホテルズが抱えるホテルの中でも一番格式の高い老舗ホテルのレストランでお見合いは予定通り執り行われた。
写真通りの真面目そうな男性。
彼の穏やかな雰囲気と木訥とした話し方は私をすごく和ませてくれた。
彼と結婚したら幸せだと思う。こんな私とでも穏やかな家庭が築けるに違いない。
でもそれは、私が桐生颯悟と出会う前だったら、の話。
食事を終えてデザートが出された。檸檬と桃のソルベ。
それを食べ終えて、返事は後日ということで彼とは別れた。
帰り道、石畳の歩道を母はまるで躍るようにモンローウォークで歩く。ゆったりとした腰のくねらせ方はなんだか誇らしげだ。
「みのり、母さんからあとで断っておくから」
「へ?」
「アンタ、桐生サンとつき合ってるんでしょ」
「なななななななんで?」
「大根湯、二日酔いにも効きそうですね、って言ってたから彼。彼に作ってもらったんでしょ? 風邪引いて寝込んだときに」
「嘘! そそそ、そんなこと、そそそ、颯悟さんが言ったの? 颯悟さんが付きっきりで看病したって」
「ふうん?」
「ふうん?って……☆§●※▽■〇×?!」
ニヤニヤ笑う母。
カマをかけられた!
「一度仙台に連れてきなさいよ。父さんだって心配してんだから」
「や、だって、ケッコンするかどうか分かんないし!」
「実家イコール結婚の承諾ってワケじゃないでしょ。フツーに遊びに来ればいいじゃない。気楽にさ、高校生のころみたいにさ」