颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「べべべ、別に。キスしたいなんて、思ってるような思ってないような」
「どっちなの?」
「さあどっちでしょう、ハハハハハ……」
「ホント、バカ?」


斜め下に見下す桐生颯悟のあきれ顔は史上最強で。

このままだと今夜もキスはオアズケだなあ、なんて思っていると突然、肩をつかまれ直後、むぎゅう~っと抱きしめられた。

あんまり強く抱きしめるから鼻が桐生颯悟の胸に当たってつぶれそうになった。

痛くて。息が苦しくてもがく。首をぐりぐりと横に振って、両手で桐生颯悟の胸を押し返して。それでも腕を緩めてはくれなくて。

ぽふっと顔を上に向けてようやく空気を吸い込んだ。

その目の前には桐生颯悟の顔。眉をひそめて切なそうに私を見つめていた。
こんな顔、初めて見た……。


「ふうん。キミはキスしなくても平気なの。ホントはして欲しいんじゃないの?」
「そそそそんなことは決して」
「……なあんて。ホントはオレが限界」
「そ、颯悟さ……んん……んっ……」


背中に回されていた手はいつのまにか私の後頭部に回り、ぐっと押さえ込まれていた。
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