颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
ふたりでいるときに、私をみのりって呼ぶのは……初めて?


「☆§●※▽■〇×?!」



ちょっと待った!!

バンっ。私はドアを開けた。カウンターの向こうでフライパンを振る桐生颯悟がいた。白いシャツにデニムのエプロン、腕まくりをして。


「どどどどうしたんですか?」
「まあ、ちょっと。どうせ作るならふたり分と思って」
「私、勘当されるんじゃないんですか? あ、朝食おわったら出てって、というパターンですか? 最後の晩餐的な」
「はあ? とにかく顔洗ってきなよ。話はそれから」


桐生颯悟はフライパンに目線をもどし、トントンと手首を叩いていた。

私は着替えてからそそくさと洗面所に行き、顔を洗った。目の下には大きなクマ、奥二重は腫れ上がって一重になり、唇はガサガサだった。みっともない顔に情けなくなる。

こんな顔で桐生颯悟とお別れになるのか。

リビングにもどると、カウンターの上にはサラダやパン、シリアルや牛乳が並んでいた。グラスやカップ、白いプレートの上にはフォークとスプーン。すべて2こずつだ。桐生颯悟はエプロンを解き、壁に引っ掛けるとキッチンから出てきた。

神妙な面もちで、私の前に立つ。


「昨夜はごめん。言い過ぎた。だから、その……お詫び」


桐生颯悟はバツが悪そうに横を向きながら言った。頬をほんのり赤く染めて。

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