颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
おいしい。お店で食べるのとおんなじ。プロみたいだ。
こんなにおいしく作れるなら、奥さんいらない。むしろこんな旦那さんが欲しい。
「上手ですね、オムレツ」
「毎日練習してるから」
「練習?」
「早百合さんがカフェでオムレツ出したいって言ってたから、何か手伝えないかな、って」
桐生颯悟はケチャップのチューブを持つと、オムレツの上に絵を絞り出した。早百合さんが看板に描くハムスターのイラストに似せている。
一途な桐生颯悟。切ないのに心温まるのはなぜだろう。こんなレアな桐生颯悟を独り占めしているから?
「颯悟さん。そう言えば早百合さん、指輪してますよね? どう見ても結婚指輪なんですけど」
「悠斗くんの父親からもらったペアリングだよ」
「じゃあ、つまりは……」
「そういうこと」
桐生颯悟の長いまつげは横から見ると際立つ。パチパチと瞬きをして、スプーンでオムレツを崩し始めた。
悠斗くんの父親からもらった指輪をずっとはめているということは、早百合さんはいまだに彼を思い続けている、ということだ。