颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
つまりは桐生颯悟は片想いで、告白をためらう理由はここにある。




*―*―*

桐生颯悟が朝ごはんを用意したので、片付けは私がすることにした。最新型の食洗機がついているので汚れを軽く流して並べるだけで済んだ。 

リビングで桐生颯悟は襟を立ててネクタイを回していた。早百合さんの話題でしんみりとしていた顔は、首元できゅっとネクタイを締めた途端にビジネスモードになった。

キッチンからの視線に気づいたのか、チラリと私を見た。すぐに視線は外されたけど。

でも。
ほんの少し、私を見るその瞳がやさしくなった気がするのは自分勝手な解釈だろうか。


早百合さんのところによっていくという彼とはむはむカフェの前で別れて、先に出社した。佐藤課長は禁煙のオフィスに紫煙をくゆらせていた。万年無精髭、オールバックに固められた髪。ちょっと乱れて頬にかかる髪がどうにも色っぽい。それにこのひと、どこか品があるのだ。こんなに乱れた格好をしていても。

大人の色気、ここにあり。
ブラックの板チョコをワイルドにかじるCMに出られそうな。もしくはブラック缶コーヒー一気飲みとか。


「麦倉、どした? 俺の顔になんかついてるか?」
「いえ。佐藤課長って誰かに似てるって言われませんか?」
「将棋の駒とホームベース」
「顎がシャープですもんね。あ、昨日のバナー、変わりましたね」
「麦倉の意見を参考にした。お礼にこれ、やるわ」

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