颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
目の前にペットボトルを差し出された。ラベルには「期間限定・濃厚ミルクティ、アーモンド風味」と印字されている、ピンク色で。


「これがうまいのなんのって。とろける甘さがたまんないわけよ。期間限定ってのが許せねえな」
「佐藤課長ってブラックコーヒーが似合いそうですけど、意外でした」
「ストレートでもレモンでもなく、昔っからミルクティ派。麦倉は何派だ?」
「ミルクティですね」
「奇遇だな。どうだ? 俺と結婚するか?」 


それを受け取るときに私の指先にコツンと当たった。佐藤課長のリングだ。このひと、噂通りバツイチなのかカマをかけてみる。


「重婚はダメですよ。結婚指輪ですよね、それ」
「これか? これはダミー。俺は未婚だ。だから気にするな」
「お断りします」
「そうかそうか、残念だ。例によってお前の今日のタスクはデスクの上。今日がんばれば週末だからな。あー、オジサンは残念だ、残念」


くわえ煙草で席を立ち、私の頭をポンポンと叩く。残念って、全然残念そうじゃないんですけど。東京の男はリップサービスも惜しみないらしい。

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