颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
目の前には陶器のようななめらかな肌、艶のある瞳は至近距離で見つめているせいかより目がちだ。妙に色気のあるひと……。

どきん、どきん、どきん……。
胸が強く鼓動する。

桐生颯悟はニコリと微笑んだ、柔らかくてホンワカするような優しい笑み。

ダメだ、吸い込まれる。


「キミ、かわいい。キスしたい」


桐生颯悟は顔を傾け、近づけてきた。
何も考えられなくなる。このあとどうなるの、なんて。


「ほら、目をつむって。キスに集中できないでしょ?」


素直に目を閉じる。
直後、唇に温かいものが触れた。このひと、本当にキスした。うわ、なに、このキス。あったかくてフワフワする。

顎に彼の指があてられ、くい、と下げられる。わずかに開いた唇から彼の湿った舌が割り込んでくる。

ちょ、ちょっと!

抵抗しようにも頭の中がぼんやりして、動けない。
こんなキス、初めて、だ……。

ちょっと、ダメ……。


「……っ、ちょっと!」


という、自分のものでない声に我に返る。
誰? っていうか今、見られてた?
桐生颯悟はゆっくりと唇を離した。あわてる様子もなく、淡々と。

ダンダンダンダン。
踏みならされる足音。このフカフカ絨毯でこれだけの音が出せるって、すごいわ。

いやいや、そんなことに感心してる場合じゃない。
その音の方向を見ると立っていたのは祐理恵さんだ。
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