颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
「お礼、何がいい?」
「そうですね。朝ごはんのオムレツとか? おいしかったから毎日食べたいな、なんて」
「それなら毎朝作るよ、どうせ自分の分を作るんだし」
「じゃあはむはむカフェでランチ一週間分とか」
「そんなのはいいよ。みのりは顔パスでオレのツケにしてもらうから。一週間と言わずにずっと」
「じゃあ……キスは?」
軽い冗談のつもりだった。口からさらりと滑ったというほうが正解。桐生颯悟のキミ、バカ?の台詞を期待して口にした言葉だったのに。
さっきまで目をそらしていた桐生颯悟は、まっすぐに私を見ていた。目をぱちくりと何度かまばたきさせて。ああ、驚いてる? いや、あきれてる?
「みのり?」
「ほら、キス友とかいうじゃないですか。ただキスするだけの間柄と言いますか。今までもキスしちゃってますし、今更感満載だし」
「……でも」
「颯悟さん、キス上手だし、いいかなぁなんて。あ、イヤだったらいいんです。イヤなら。あの、冗談ですから冗……」
体育座りをしていた桐生颯悟は身を乗り出し、両手をついて四つん這いでこっちに向かってきた。