颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)

何度かはまれているうちに、今度はもっと湿ったものが私の唇を這った。上唇をするするとなぞられ、下唇もするするとなぞられ、なぞられているのは唇なのに体の芯がかあっと熱くなる。

舌が上唇と下唇の間に滑り込む。歯列をなぞられ、深いキスを求められているのはわかったけれど、自分からリクエストしただけにそれを許してしまったら、エロいキスを求めていると思われそうで嫌だった。腑抜けの体でできる限りの力で歯を食いしばり、舌の侵入を頑なに拒んだ。

すると今度は耳元に何かが触れた。桐生颯悟の指だ。耳の外側の輪郭をツツーっとなぞり、首筋から顎にかけて手を添えた。指の間に耳を差し込むように。

肌が粟立つ。耳、ダメだってば。
耳の裏なんか、特に。

あ……っ、だ……。

油断して力を抜いた瞬間に湿った生暖かいものが歯列を割り入って。浅いところと深いところを交互にかき乱されて。ダメ、これ以上、されたら、その、止まらなくなる。

私は右手で桐生颯悟のシャツをつかもうと手を伸ばす。ちょうど左胸のポケットの口に指が引っかかった。つつっ、と引っ張って合図を送る。

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