颯悟さんっ、キスの時間です。(年下御曹司は毒舌で腹黒で…でもかわいいかも?)
たぶらかしてるのは桐生颯悟のほうだ。初対面の私をエグゼクティブフロアに強引に連れ込んで、勝手に恋人にして、そそのかしてキスをして、同棲させて……私を翻弄させて。
でも他人には私がたぶらかしているように見えるのか。
「たぶらかすもなにもありません。私が押しかけ女房的にですね、一方的に好きな感じで」
「祐理恵嬢の話だと坊ちゃまのほうが入れ込んでるらしいじゃないか。みのりみのりみのりーっ!って。まあ、気をつけろよ。身分差ってのはクるものがあるらしいから」
「そのクるっていうのはそそるという意味ですか?」
「それもあるし、住む世界が違うってのは精神的に、な。庶民は引けを感じて逃げたくなるらしい」
「そうですか。そうなる可能性もあるので会社のひとにはご内密にお願いします。そういえば課長、ミルクティの美味しいカフェがあるんですけど」
「へえ。カフェねえ」
課長は気のない返事をして、指輪をくるりと回した。
佐藤課長の薬指のリングはシンプルで、ひと粒の石が埋め込まれている。黒く見えるが、わずかに青みがかっているからサファイアだろう。女除けというわりにペアリングっぽい。シングルというのは嘘で、実は単身赴任で地方に妻子がいるとか?
謎だ、所帯染みてる風ではないのに落ち着いているのも。
「そうだ。麦倉の歓迎会、今夜でいいか? 坊ちゃまに許可もらわないといけないか? 一応、副社長秘書に連絡いれとくわ」
「はい。ありがとうございます」
別に連絡しなくても。保護者じゃあるまいし。
*―*―*
でも他人には私がたぶらかしているように見えるのか。
「たぶらかすもなにもありません。私が押しかけ女房的にですね、一方的に好きな感じで」
「祐理恵嬢の話だと坊ちゃまのほうが入れ込んでるらしいじゃないか。みのりみのりみのりーっ!って。まあ、気をつけろよ。身分差ってのはクるものがあるらしいから」
「そのクるっていうのはそそるという意味ですか?」
「それもあるし、住む世界が違うってのは精神的に、な。庶民は引けを感じて逃げたくなるらしい」
「そうですか。そうなる可能性もあるので会社のひとにはご内密にお願いします。そういえば課長、ミルクティの美味しいカフェがあるんですけど」
「へえ。カフェねえ」
課長は気のない返事をして、指輪をくるりと回した。
佐藤課長の薬指のリングはシンプルで、ひと粒の石が埋め込まれている。黒く見えるが、わずかに青みがかっているからサファイアだろう。女除けというわりにペアリングっぽい。シングルというのは嘘で、実は単身赴任で地方に妻子がいるとか?
謎だ、所帯染みてる風ではないのに落ち着いているのも。
「そうだ。麦倉の歓迎会、今夜でいいか? 坊ちゃまに許可もらわないといけないか? 一応、副社長秘書に連絡いれとくわ」
「はい。ありがとうございます」
別に連絡しなくても。保護者じゃあるまいし。
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