最恐ドクターの手懐けかた II
ナースとして働いていた私は、その大変さがよく分かる。
当直医は基本一人で急患の対応をしないといけないから。
だから、近くにいてくださいなんてわがまま言えるはずもなかった。
「終わったら、すぐに戻ってくるからな」
そう言って、優しいキスをくれる。
胸がじーんと熱くなった。
病室の扉を開けた遠藤先生の顔は、いつものしかめっ面に戻っている。
そして、暗い夜の病棟へ消えていった。
こんな遠藤先生の力になれなくて、心配させて、申し訳ないと思う。
だからこそ、お腹の赤ちゃんは守らねばならないと強く思った。