最恐ドクターの手懐けかた II
柊からちらりと聞いたことがある。
その子の名前は、偶然にもあたしと同じ『緑(みどり)』なのだ。
そんな話をしてくれるお義母さんは、必死に元気な顔をしているけど、涙ぐんでいた。
当時の傷は今も治らないのだろう。
「みどりちゃんが柊と結婚してくれた時、あの子が帰ってきたと思った。
それくらい、みどりちゃんは大切な子なの。
だから……みどりちゃんには、絶対に辛い思いをして欲しくない」
お義母さんの気持ちは嫌というほど分かった。
そして、血の繋がらない存在の私を、我が子のように大切にしてくれて感謝の気持ちでいっぱいだ。
元気な子を産んだら、絶対にお義母さんに抱かせてあげたい。
「大丈夫です」
それは、自分自身へ言い聞かせる言葉でもあった。