最恐ドクターの手懐けかた II
「奈々、退院出来たんだ」
そう言って私に歩み寄る彼は、見慣れたスーツ姿だった。
濃紺のスーツに、黒い鞄を持っている。
そして、自宅マンションを見上げながら私に告げる。
「奈々、もしかしてここに住んでるの?
やっぱり医者と結婚したら、住む世界が違うんだね」
確かにその通りかもしれない。
医師であり漢マンである遠藤先生の稼ぎは半端ないから。
私の給料なんてお小遣い稼ぎだったから。
だけど、健太にはそんなことを話したくない。
警戒して後退りしながら、
「何でここにいるの?」
聞いていた。