最恐ドクターの手懐けかた II
曲の余韻に浸っている私に遠藤先生は言う。
「確かにあいつのボーカル技術は神がかってるからな。
それだけじゃねぇ、賢一も慎吾も親父だってすげぇ。
俺はこの曲を、こいつらみたいに演奏することは出来ねぇ」
その悩ましげな顔に言葉を飲んだ。
「でもそれは分かっていたことだ。
俺は親父に勝てねぇから、あの世界には入らない。
今回の一件で、はっきり分かった」
そりゃあ、日本一とも言われるプロデューサー兼ギタリストの艶には勝てないよ。
だって、艶に勝ったら遠藤先生が日本一でしょ?
なんて言葉が出かかって、ぐっと飲み込んだ。