最恐ドクターの手懐けかた II






小野先生が笑いながら、私の後ろを見て言う。




「遠藤先生、そんなに怖がらなくてもいい。

冴木さん、頑張っているよ」






遠藤先生は私の後ろに隠れているというのか!

なんて臆病な産婦人科医だろう!!





スタッフが笑い、私まで笑ってしまった。

そして次の陣痛で力いっぱいいきむ。

明るい顔の小野先生が教えてくれる。




「頭が見えているよ。

会陰切開して出すからね。

キシロカインください」







遠藤先生とこの分娩室に入ったことは何回もある。

そのいずれの時も、彼は冷静でテキパキ仕事をこなしていた。

森田さんが漢マンを流し始めた時でさえ。

だけど今日の遠藤先生は、普通の付き添いの男性のように怯え、心配し、私を労ってくれる。


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