最恐ドクターの手懐けかた II
遠藤先生の手が、そっと頰に触れる。
そこから熱を持って、顔が真っ赤になってしまいそうだ。
許したくないのに、許したくなってしまう。
力いっぱい抱きしめて欲しいと思ってしまう。
私にも、遠藤先生しかいないのかもしれない。
「奈々」
低く甘い声に身震いする。
その優しく切なげな瞳から目が離せない。
「本当にごめん。
俺にはお前しかいねぇんだ」
やめて、そんなこと言わないで。
「帰ってこいよ。
離婚とか、頼むから言うな」
本当に好きになってしまうから。
これ以上好きになってしまうから。
「お前がいないと俺は、もう生きられねぇ」
「なっ……なにを大袈裟な……」
そう言いながらも、頰を涙が流れ落ちた。
遠藤先生の真っ直ぐな言葉が、信じられないほど胸を抉るから。
こうやって、どんどん遠藤先生に溺れていくのだろう。
私だってもう、彼から離れられないのかもしれない。