『 』
そんな気持ちで書いていたんだ。
その言葉を聞けてこっちも楽しくなった
彼のことが知れて嬉しくなった。
でも、ちょっと、疑問が浮かんだ。
「ねぇ、どうして、小説を書こうと思ったきっかけってなに?」
「それは、ある人の影響かな」
「ある人?」
「うん、とても優しい人だったよ
その人は、二つ上のお兄ちゃんみたいな存在で、
幼いことから、何をするにも一緒で
僕はのんびりとすることが多かったから、
のろまとか、邪魔だって言われてた
でも、お兄ちゃんは、それがお前の良いところだって言ってくれた。
だから、何かあるたびにこちらの気持ちを察して、言葉をくれる。
僕は、あんまり、表情が顔に出るタイプじゃないのに――」
彼の話を聞くと、その感情を知っている気がした。
「その人のことを愛してるんだね」
「そうなのかもしれない」
「その気持ちは伝えないの?」
彼は、儚く笑った。
「伝えたいよ。
気持ちを伝えとけば良かったって、思ってる。
でも、もう、言葉を交わすことは出来ない
だって――、
もうこの世界のどこにもいないんだ」
そんな素敵だった人に自分は敵わない。
彼の思い出はとても色鮮やかに見えているから
それを汚したり、傷つけてはいけない。