長野さんはイケメンさん
「1時間くらいで帰るから。じゃあ、そうことで。」
と、電話は切られてしまった。

「えっ?ちょっと!お兄ちゃん!もしもし?お兄ちゃん?」

既に切れてしまったスマホを見つめ、諦めて鞄にしまうと、長野さんを見上げる。
背、高!!
180cmくらいあるのかな?もっとかな。

そんなことを考えていると、長野さんが柔らかく微笑んで、
「今晩は。お兄さんの隣の部屋に住んでます。長野慧です。よろしくね。」
そう言った。

「あっ、えっと…、初めまして。西野優香里です。」
そう言って、お辞儀した。

「取り敢えず、どうぞ。」
長野さんは隣の部屋のドアを開けると、私を中に招き入れた。

お兄ちゃんの友達みたいだけど、私は長野さんとは初対面で、知らない男の人で…
う~ん。いいのかな?

そんなふうに思いながらも、あまりにも自然な振る舞いに、ごちゃごちゃ考えてる自分のほうがおかしいのか?
とも思えてくる。

『慧ん家で待ってて。』
と、お兄ちゃんに言われたし…。いいか。

「お邪魔します。」

玄関を入り、長野さんが出してくれたスリッパを履き、後をついていった。

リビングに入ると、ダークブラウンの3人掛のソファーに座るよう促された。

「ここで待ってて。今、飲み物持ってくるね。珈琲でいいかな?ミルクと砂糖は?」

「あっ、ありがとうございます。ミルクだけお願いします。」

そう言うと、フッと口元を緩め

「ちょっと待っててね。」

優しい笑みを向けた後、キッチンに歩いて行った。

長野さんは、しゃべり方も、仕草も格好良くて…。う~ん…、見惚れるのは仕方ないよね。
キッチンに向かう後ろ姿を見ながら、そんなことを考えていた。

しばらくすると、マグカップを2つ持って戻ってきて、
「どうぞ。」
と、ソファーの前のローテーブルにカップを置いた。

「ありがとうございます。」

「健と約束してたの?」

「はい。20時に来てくれって急に連絡があって。」

「なのに、健はいないと…。」

ははっと笑った後、
「大変だったね」
涼しげな目元が緩くカーブして、労るように言葉がかけられた。

「仕事帰りだよね。夕飯はまだかな?」

「はい。」

「俺もまだなんだ。良かったら一緒にどうかな?」

いきなり初対面の男の人の部屋にいて、しかも一緒に夕飯!?
驚いて、長野さんをじっと見つめてしまう。

「えっと、あの…。」

なんと返事をしようか考えていると、

「健、まだ時間かかるみたいだし。近くのイタリアンがなかなか美味いんだ。デリバリーもあるから。」

そう言って、タブレットを持ってきて、メニュー画面を見せてくれる。









< 2 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop