長野さんはイケメンさん
お兄ちゃんは結局、長野さんに私のことを頼むと、慌ただしく帰って行った。

「なんか、すみません。ご迷惑おかけして。」

「迷惑なんて、そんなことないよ。俺がまだ、優香里ちゃんと一緒にいたかったから。」

!!!!!

イケメンさんに爽やかな笑顔で、そんな甘い言葉を言われたら~。
反則だ。破壊力が半端なくて、勘違いしてコロッと恋に落ちてしまいそうだ。

パスタを食べ終わったら、お兄ちゃんから貰ったロールケーキが気になってしまう。
ソワソワしながら

「あの、長野さん、ロールケーキ良かったら一緒に食べませんか?凄く美味しいんです。いつも直ぐ売り切れちゃって、なかなか手に入らないんです。」

長野さんは、ちょっとビックリしたように目を見開いて、それからニッコリ笑った。

「いいのかな? せっかく健が、優香里ちゃんに持ってきたのに。」

「一人で食べるより、一緒に食べたほうがもっと美味しいし…。」
なんだか恥ずかしくなってしまって、だんだん声が小さくなっていく。

「それじゃあ、いただこうかな。ありがとう。」

「はい。」

ロールケーキの箱を手に、長野さんと一緒にキッチンに行く。
長野さんが、お皿とフォークを出してくれた。
適当な大きさに切り、ロールケーキをお皿にのせる。

「なんか2人でキッチンに立ってると、新婚さんみたいだね。」

そんな長野さんの何気ない一言に、ボンっと顔が赤くなるのがわかった。

「えっ、あっ、あの…、アハハ…。」
赤くなった顔を見られないよううつむいた。

このイケメンは無自覚なのか。無自覚で、そんな勘違いしそうなことをサラッと言うのか。
これ以上、一緒にいると私の心臓がもたないかもしれない。
ロールケーキを食べたら、早く帰ろうと、コッソリ決心したのだった。

ロールケーキを食べながら、お兄ちゃんの話や本の話、映画の話など、長野さんとの会話を楽しんだ。

「今度、公開される○○の映画が凄く楽しみで。」

「ああ!あれ面白そうだよね。良かったら一緒に観に行こっか? 優香里ちゃんは、土日休み?」

「えっ!?一緒に?」

「うん。今週末はどうかな? 休み? 何か予定ある?」

「あっ、休みです。その映画を観に行こうかなと思ってました。」

「じゃあ、ちょうど良かった。一人で観るより一緒に観るほうが、もっと楽しいよ。」

そう言われてしまうと、断る理由もない。

「はい。よろしくお願いします。」





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