長野さんはイケメンさん
「映画デート、楽しみだね。」
と、長野さんがニッコリ笑う。

「えっ、デート?」

「あっ!彼氏がいたら、デートはまずいか。優香里ちゃん、彼氏いる?」

「いえ、…いないですけど。」

「じゃあ大丈夫だ。デートだね。」

フフッと笑って見つめてくる。

そうか、一緒に映画にいくのはデートなのか。
なんか…。大丈夫かな、私。

大学生の頃に、サークルの先輩に告白されて、半年ほど付き合ったことがある。
社会人になってからは、全然、男性との付き合いもなく、恋愛偏差値はかなり低いのだ。
デートなんて、何年ぶりだろう。

そもそも、こんな恋愛偏差値高そうな人とデート?
デートって言っても、お兄ちゃんの友達だし、妹みたいな感じってことだよね。
そんなことを頭の中で、ぐるぐる考えていた。

「楽しみだね。じゃあ、連絡先交換しとこうか?」
と、長野さんがスマホを手に取った。

「はい。」

私も鞄からスマホを取りだし、お互いの連絡先を交換した。

なんだかデートのお誘いも、連絡先の交換も、とってもスムーズで、慣れてるんだなぁと思った。

ロールケーキを食べ終えたら、長野さんが車で送ってくれるというので、マンションの地下駐車場まで一緒に行った。

車はシルバーメタリックの高級車で、助手席のドアを開けてエスコートしてくれる。

なんというか、一つ一つの動作がいちいちスマートで格好いいのだ。
しかもそれが、二次元から抜け出てきた王子様のような姿形で、されるものだから、ドキドキが半端なくて困ってしまう。

車に乗り込み、私がシートベルトをしたのを確認すると、スムーズに車を発進させる。

家族以外の人の車に、しかも助手席に乗るのは初めてだなぁと思うと、なんだか緊張してしまう。

長野さんが、ステアリングをにぎる運転席を、ついつい見てしまう。
横顔も素敵だなぁ。
運転する姿が格好いいなぁ。
指が綺麗だなぁ。

そんなことを考えていたら、運転中の長野さんがクスッと笑って、

「優香里ちゃん、見すぎ。」
と言った。

あっ、しまった!ついついガン見してしまったことに気づいて、恥ずかしくなった。

「ご、ごめんなさい。」

「フフッ。大丈夫だよ。優香里ちゃんちの住所を教えてくれるかな?」

地下駐車場から出た広いスペースに車を停めると、ナビに私のアパートの住所を入力する。

「そんなに遠くないね。車で15分くらいかな。」

そう言って、再び車を発進させた。
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