長野さんはイケメンさん
!!!!!

口説く? えっ? な、何? ビックリして、長野さんを見る。

綾が笑顔で、ビシッと敬礼して、
「わかりました。優香里は不参加です。お任せください。」
と、元気よく返事をする。

「ありがとう。」
長野さんが柔らかく笑った。

外に出ると、長野さんが、2台止まった前のタクシーに、綾を促す。タクシーの運転手さんに、タクシーチケットを渡し
「これでお願いします。」

そう言って、綾に、
「じゃあ、おやすみ。坂口さん。」
と、挨拶した。

綾の乗ったタクシーが発進すると、長野さんが、もう1台のタクシーにエスコートしてくれる。
背中にそっと手を添えられて、なんだかドキドキしてしまう。
私が座ると、長野さんも隣に座って、私のアパートの住所を告げる。

『ゆっくり口説こうと思ってるところなんだ。』
さっきの長野さんの言葉が、ぐるぐる頭の中をまわる。

口説く? 長野さんが私を?
口説くって何だっけ?

そんなことを考えていたら、長野さんが
「今日はビックリしたよ。あの店よく行くの?」
と聞いてきた。

「あ、はい。たまにですけど、会社から近くて、料理も美味しいし好きなんです。」

「うん。料理美味いよね。また今度、一緒に行こうか?」

えっ? 一緒に? 食事のお誘い? なんか、これってどういう状況?

無言で考えていたら、

「優香里ちゃん?」
と、名前を呼ばれる。

長野さんの声に、ハッとして、
「あっ、はい。是非。」
と、答えた。

「フッ。なんか、緊張してる?」
と、長野さんに聞かれる。

「……」
緊張はしてる。なんと言ってよいか考え込んで、無言になってしまう。

「はい。いえ、あの…」
言葉を発するが、後が続かない。

「もしかして、優香里ちゃんのこと困らせてるかな?」

「そんなことないです!」
考えるより先に言葉がでた。

長野さんを見ると、視線が絡まった。
優しい瞳にまっすぐ見つめられて、自分の顔が赤いのを感じる。
お酒に酔ってるせいで赤いのか、見つめられて赤くなったのか、なんだかよくわからない。

フワフワした感じで、なんか気持ちいいなぁ。きっと酔ってるなぁ。そう思いながら、長野さんを見つめる。

長野さんは穏やかに微笑んでいた。

やがて、タクシーがアパートの前に停まった。

タクシーの運転手さんに、待っていてくれるよう頼んで、長野さんも一緒に降りた。










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