不思議探偵アリス ~切り裂きジャックと赤の女王 ~
それから私たちは現場を離れ、公園のベンチに腰を下ろした。
レオンは壁にもたらりかかって彼女の話を聞いている。
彼女の名前はメアリー・ジェーン・ケリー。
彼女も被害者たちと同じ学校に通う生徒だった。
被害者の中には彼女の友達いて今回殺された少女も彼女の友達だったと言う。
「ごめんね、辛いこと聞いて」
「いえ......」
彼女の話では殺される生徒にはなんの共通点もなく、誰が殺されるかはわからないと言う。
「みんないつも怯えてるんです。いつ殺されるのかって」
とメアリーはうつむいた。
ひどいことをしてしまったのかも知れない。
私は彼女になんて声をかけるべきかわからず、ただ彼女の背中をさすってあげることしかできなかった。
するとレオンがこちらへ歩いて来たかと思うと
「なぜこの街の奴らは切り裂きジャックについて話さない?」
と突然メアリーにそうたずねた。
今、彼女が私たちのせいで苦しんでいるというのに
本当にこいつは無神経だ。
「ちょっと!あんたメアリーの気持ちも考え......」
「大丈夫ですから」
そう言ってメアリーは私の言葉を遮ると、顔を上げ涙を拭った。
メアリー......
「噂があるんです」
「噂?」
そんなものが......
「切り裂きジャックについて話すと殺されるっていう......」
その言葉で街の人々がどれだけ切り裂きジャックを恐れているのかと言うことがわかった。
「でも、殺されるのは女学生だけなんじゃ......」
「だからって下手なことを話したら口封じのために殺されるかもってみんな......」
そうか!
だから誰も中々素直にこたえてくれなかったのか。
「なるほどな」
レオンはそう言うと元の場所へと戻った。
「ごめん」とか「ありがとう」とか、ないわけ?
せっかく教えてくれたのに。
レオンを睨みつける。
レオンは私と目が合うと、何か悪ことしたのか?と言った顔をした。
ほんとにこいつは......
「つ、次は私なのかも......」
とメアリーが小さな声で呟いた。
その声は今にも恐怖で押しつぶされてしまいそうなものだった。
何かして上げられることはないのだろうか。
私たちにできること......
「あ!」
と私は良い考えを思いついた。