ガラスの境界、丘の向こう
 心配性のママは学校から帰るたびに眞奈を質問攻めにした。

 友達はできたか、英語はちゃんと通じているか、積極的に話そうとしているか、授業についていけているのか、など本当にいろいろ。

 でも、眞奈はあまりママを喜ばせるような返事ができなかった。

 まず授業についていっているかどうか、これがかなりあやしい。
 先生たちは外国人の眞奈には甘めだったにもかかわらず、乃第点がやっとであった。

 そして友達ができたかどうか……、こっちはもっとだめである。

 今でもウィルの他に友達はいなく、クラスではいるのかいないのか、ぼやけた存在だった。
 たまにいることに気がついてもらっても、『あの中国人の女の子』というのが眞奈の存在名になっていた。

 みんなべつに意地悪で言っているわけでも、わざと国を間違えているわけでもなかった。
 眞奈の名前を知らない生徒がほとんどだし、何かの拍子で名前を聞く機会があったにしても覚えづらい。出身国についてはなおさらあやふやなだけなのだ。

 顔からして『極東アジアのどこか』ぐらいの認識で、イギリスで極東アジアといえば日本よりも中国の方が断然ポピュラーなため、自動的に『中国人の女の子』というわけだった。

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