ガラスの境界、丘の向こう
 マーカスの親は仕事の関係でレバノンのベイルートにいるそうで、イザベルとともに幼児部からウィストウハウス・スクールの敷地内にある寮に入っていた。

 ウィストウハウス・スクールの生徒は、マーカスとイザベルのように学校寮で暮らす生徒が三分の一ぐらい、残りは眞奈やウィルのように自宅から通う生徒だ。

 寮生活はかなり厳格で大変らしかった。
 厳しくしつけられているせいか、クラスの優等生はほとんど寮生で占められており、マーカスとイザベルもその優等生の一人だった。

「私はこの物語をあんまりダークだとは思わないわ。深い意味でのハッピーエンドじゃないかしら」
 イザベルの声は少し低くて感じよく響いた。

 それに彼女の美しい横顔や印象的なすみれ色のひとみ、やわらかそうなブロンドの髪、すらりとしたスタイル。

 眞奈はウィルから、イザベルはウィストウハウス・スクールのマドンナとして近隣の学校でも有名な女の子だと聞いたことがあるが、さもありなんという感じだ。

 それでいてイザベルには気取ったところや威張ったところは全然なかった。マーカスもそうだったが、イザベルもマーカスに劣らず地味で穏やかな人柄だった。
 同じかわいい女の子でも、かわいさを自慢げにアピールする派手な子たちとは一線を画していて、より彼女の可憐さを際立たせていた。

 眞奈はイザベルと自分とを比べ出すといつもみじめな気持ちになった。

 ウィルと眞奈が連れ立って教室を出るとき、マーカスとイザベルが立ち話をしているそばを通り過ぎたが、眞奈はなるべくそっちを見ないようにした。

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