ガラスの境界、丘の向こう
「じゃあな!」

 変則スキップで去って行くウィルを見ながら、眞奈もウィルの真似をして肩をすくめた。
 変なの。まぁ、でも最愛の友達が幸せだっていうのは私にとっても幸せなことだよね!

 そう思うことにした眞奈だったが、ウィルの姿が大階段の下に見えなくなると、急に不安で心細くなってきた。
 ウィルがいなくて学校の授業に出るのは初めてだ。

 二〇八号室。

 眞奈は、「教室くらいちゃんと覚えてるよ」とウィルに言い放ったものの、記憶はさっぱりだった。

「さぁどっちに行ったもんかしら。もう最初からわからないんだけど……」

 眞奈が大階段からどちらに行こうかと注意深く辺りを眺めていると、ちょうど後ろからマーカスとイザベルが来るのが見えた。

「どうしよう、マーカスたちだ」

 二人が近づいてくるのを見て、眞奈は逃げ出したかったが体が動かなかった。

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