絆創膏
店内は一面鏡張りで、シャンデリアの光をカラフルに反射して高級感を演出している。

が、机に埋め込まれたこの宝石達が本物でないところを見ると、そこまでグレードの高い店でないことは見て取れた。



「さ、何飲む?」

「お、オレンジジュース」

「あれ、お酒苦手ー?」

そう言いながら自分の分のお酒も一緒にボーイさんへ告げた。


それなりにお客さんは多く、いつものカフェの静かさが恋しくなった。



直ぐにグラスが運ばれてきて、乾杯するなり本題に移った。

「そうそう、その探し人の名前ってなんていうの?」

「いや、名前はわからなくて…」

「じゃ、特徴は?」


これと言った特徴も分からない。
ただ、オーラが凄かったと言うだけで。

人ひとりの感じ方次第の特徴しか浮かんでこない自分に腹が立った。

もしかしたら見つけられるかもしれないのに…。


「なんか、雰囲気がすごい人」

「は?」

「きっとここらで有名な人!…のはず」

本当に適当なことを言うもんだ。
でも少し自信があった。

「有名…ねえ、」

「あと、絆創膏持ち歩いてる」

「何それ」

ふふっと笑う金髪ホストも、改めてみたら可愛い顔をしている。

年上なことに間違いはないが、それでも母性本能をくすぐられるような魅力を持っている。

さすがホスト、なんて納得してる場合では無い。


「酔っ払いに絡まれてるところを助けてくれたんです」

さすがに一目惚れのことは隠すことにした。

奥さんがいるということも、もしかしたら違うかもしれないという望みを持ってか、言わなかった。


「オーラがすごくて有名で、優しい人、なんてアバウトすぎるよ」

金髪ホストはまだ笑っている。

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