〜恋慕〜もしも死んだ愛する人が、生き返ったとしたら
◆◆◆
美希が戻ってきてから一カ月程が経ち、すっかりと今の生活にも慣れてきた。家に帰れば笑顔の美希が俺を出迎え、一緒に夕食を取って夜は美希を抱きしめて眠る。そんな幸せな毎日。
俺は右手に持った小さな箱を目前で掲げると、それを見つめて微笑んだ。
今日は、美希と付き合って十年目の記念日。高校の同級生だった俺達は、俺の一目惚れから交際をスタートさせると、時々小さな喧嘩をしながらも順調に関係を築き上げてきた。
そう──あの日突然美希が俺の元から消えてしまった日までは。
イチゴの乗ったショートケーキを嬉しそうに食べる美希の姿を想像すると、ケーキの入った箱を持って自宅へと急ぐ。
すると、家に近付くにつれて徐々に騒がしくなってきた周りに気が付き、嫌な予感がした俺は自宅へと向かって一気に駆け出した。
目の前に見えてきた自宅へと続く角を曲がると、そこにはたくさんの人集りと二台の消防車が止まっている。さらに奥へと続く道の先へと視線を移すと、驚きに身を固めた俺は右手に持っていた箱を落とした。
愕然と立ち尽くす俺の瞳に映っているのは、俺の住む木造アパートが勢いよく燃え上がっている光景だった。
───!!!
「……美希っ!!!」
群がる人集りを押し退けると、俺は家の中へ入ろうと必死に前へ向かって足を進める。
「……っ、君! 危ないから下がって!!」
「美希が……っ! 美希がまだ中にいるんだ!!!」
制止を振り切ると、急いで階段を駆け上がって自分の部屋へと向かう。
(美希っ……、美希……っ!! 無事でいてくれ……っ!!!)
燃え盛る炎の中、なんとか自分の部屋まで辿り着いた俺は、呼吸もままならない程の煙の中で必死に美希の姿を探した。
「美希っ!!! ……っ、美希!!! 」
「京、ちゃん……」
微かに聞こえてきた声に目を凝らすと、そこには泣きながら蹲っている美希の姿があった。
俺はすぐさま美希の元へと駆け寄ると、その小さな身体を優しく抱きしめる。
「美希……っ。もう大丈夫だよ」
「京ちゃん……」
涙を流しながら、震える小さな手で俺を抱きしめ返した美希。
『この家から出たら、私は消えてしまう』
美希が俺の元へと戻ってきた日、美希から告げられたその言葉。
俺は腕の中にいる美希をギュッとキツく抱きしめると、その耳元に向けて優しく口を開いた。
「……大丈夫。もう美希を一人にはさせないから」
抱きしめている身体をほんの少しだけ離すと、俺は美希の唇にそっと優しくキスを落とした。
「愛してるよ、美希──」
そう告げると、俺は目の前の美希を見つめて優しく微笑んだ。
──────
────
美希が戻ってきてから一カ月程が経ち、すっかりと今の生活にも慣れてきた。家に帰れば笑顔の美希が俺を出迎え、一緒に夕食を取って夜は美希を抱きしめて眠る。そんな幸せな毎日。
俺は右手に持った小さな箱を目前で掲げると、それを見つめて微笑んだ。
今日は、美希と付き合って十年目の記念日。高校の同級生だった俺達は、俺の一目惚れから交際をスタートさせると、時々小さな喧嘩をしながらも順調に関係を築き上げてきた。
そう──あの日突然美希が俺の元から消えてしまった日までは。
イチゴの乗ったショートケーキを嬉しそうに食べる美希の姿を想像すると、ケーキの入った箱を持って自宅へと急ぐ。
すると、家に近付くにつれて徐々に騒がしくなってきた周りに気が付き、嫌な予感がした俺は自宅へと向かって一気に駆け出した。
目の前に見えてきた自宅へと続く角を曲がると、そこにはたくさんの人集りと二台の消防車が止まっている。さらに奥へと続く道の先へと視線を移すと、驚きに身を固めた俺は右手に持っていた箱を落とした。
愕然と立ち尽くす俺の瞳に映っているのは、俺の住む木造アパートが勢いよく燃え上がっている光景だった。
───!!!
「……美希っ!!!」
群がる人集りを押し退けると、俺は家の中へ入ろうと必死に前へ向かって足を進める。
「……っ、君! 危ないから下がって!!」
「美希が……っ! 美希がまだ中にいるんだ!!!」
制止を振り切ると、急いで階段を駆け上がって自分の部屋へと向かう。
(美希っ……、美希……っ!! 無事でいてくれ……っ!!!)
燃え盛る炎の中、なんとか自分の部屋まで辿り着いた俺は、呼吸もままならない程の煙の中で必死に美希の姿を探した。
「美希っ!!! ……っ、美希!!! 」
「京、ちゃん……」
微かに聞こえてきた声に目を凝らすと、そこには泣きながら蹲っている美希の姿があった。
俺はすぐさま美希の元へと駆け寄ると、その小さな身体を優しく抱きしめる。
「美希……っ。もう大丈夫だよ」
「京ちゃん……」
涙を流しながら、震える小さな手で俺を抱きしめ返した美希。
『この家から出たら、私は消えてしまう』
美希が俺の元へと戻ってきた日、美希から告げられたその言葉。
俺は腕の中にいる美希をギュッとキツく抱きしめると、その耳元に向けて優しく口を開いた。
「……大丈夫。もう美希を一人にはさせないから」
抱きしめている身体をほんの少しだけ離すと、俺は美希の唇にそっと優しくキスを落とした。
「愛してるよ、美希──」
そう告げると、俺は目の前の美希を見つめて優しく微笑んだ。
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