浮気の定理-Answer-
「じゃあ、少しだけ
かくまってあげますね?」


彼女は、いたずらっ子みたいな顔でそう言うと、少しだけ横にずれて自分の隣の席をすすめてくれた。


「ありがとうございます。助かりますよ」


遠慮なくそこに座って礼を言うと、彼女は空いてるグラスにビールをついで、僕に手渡してくれる。


彼女にも酌をしようと、ビール瓶を取り上げると、彼女は慌てて自分のグラスに手で蓋をした。


「あ……すみません

明日も早いので、そんなに飲めないんです」


申し訳なさそうな、それでいて残念そうな、彼女の顔。


そうか……お子さんいるんだったよな……


「毎日何時に起きてるんですか?」


たくさんいるパートさんの中でも、清水さんは若い方だった。


アルバイトの子なら学生やフリーターの子もいたけれど、主婦の中ではダントツだ。


みんなお子さんは大きくて、気ままにお小遣い稼ぎをするような人たちばかり。


だからまだ小学生のお子さんを二人も育ててるお母さんは珍しかった。


「6時くらいですかね?」


時計を見ればすでに10時を回ってる。
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