浮気の定理-Answer-
番号とLINEのIDを交換しようと言ったのは、自分からだった。


その時は別に彼女とどうこうなりたいと思った訳じゃない。


シフトの変更とか急な休みとか、何か困ったことがあったら、いつでも連絡くださいって意味だった。


彼女は一瞬、戸惑ったような顔を見せたけど、その理由に安心したように、助かりますと答えた。


「いえ、清水さんだけじゃないんで

パートさんにはみんな聞くようにしてるんですよ」


それは嘘じゃなかった。


店の事務所にかけるのは、みんな気兼ねするらしく、店長に嫌味の一つも言われて気まずいんだと、ベテランパートの菊地さんに泣きつかれたのがきっかけだったっけ。


そう言えば自分のことを棚に上げて、清水さんに何か言ってたけど、菊地さんの方が、休む理由が遊ぶためのものなのだから、タチが悪い。


とはいっても、さすがに当日ドタキャンてことはないけれど……


「もしかしたら、子供の行事とかで連絡させてもらうかもしれないです」


少し遠慮がちにそう言った彼女に、菊地さんもこのくらい謙虚だったらなぁと思ったことは内緒にしておこう。

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