浮気の定理-Answer-
北川の場合②
「ただいま」


玄関から奥に向かって、いつものように声をかける。


パタパタとスリッパを鳴らしながら出迎えたのは、妻の智子だ。


6歳下の妻は、50になったばかりだが、まだ若々しい。



「おかえりなさい、あなた」



そう言って微笑む妻を見ていると、俺はいつも罪悪感でいっぱいになる。


ついさっき、若い娘を抱いてきたばかりだなんて、妻に知れたらと思うと怖かった。


けれど時間が経てば経つほど、その気持ちは薄らいでいき、逆に真由に会いたいと思う気持ちが強くなっていく。



「ずいぶん遅かったのね?食事でいい?」



この聞き方は新婚の頃からの、智子の癖だった。


食事でいい?と聞いてきた時は、食事を先にしてもらいたい時だと、知っていた。


伊達に長年連れ添ってる訳じゃないなと思いながら、その一方で浮気している事実が重くのしかかってくる。
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