浮気の定理-Answer-
「はい、ゴホッ……はぁ……そう、お粥です

僕、なんにも食べてなくて……

薬、飲むのにも何か……ゴホッ……食べた方がいいんです……よね?」


我ながら、どんだけ必死なんだと思いながら、こんな状態のくせに、わざと彼女の情に訴えるようなことを言っていた。


これが菊地さんならこんなに必死にならなかっただろう。


菊地さんだけじゃない。


他のパートさんなら、こんなこと言わないはずだ。


LINEでいろんなことを話したからなんだろうか?


清水さんは、パートさんの中でもいつの間にか特別な存在になっていた。


こうしてわざわざ見舞いに来てくれただけでも有り難いことなのに、僕はもっと彼女に甘えようとしている。


今までの自分からは考えられないほど、大胆に。


「わかりました、お粥……作りますから

飯島さんは寝ててください」


根負けしたように、彼女が了承してくれる。


自分がわがまま言ってるってことは理解してた。


彼女は人妻で、二人の娘さんの母親なのだ。


なのに彼女が僕の申し出を受けてくれたことが、こんなにも嬉しいなんて……

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