浮気の定理-Answer-
気がついたら、目の前には清水さんがいて、僕はまだ夢の続きを見ているんだと思った。
「飯島さん?お粥出来ましたよ」
そう、清水さんがお粥を作ってくれる夢。
「ん……あ…れ?しみ…ず……さん?」
それはあまりにもリアルにそこにいて、夢ならば触れてもいいんじゃないかと思えた。
そっと右手を伸ばして、夢の中の彼女の頬に触れてみる。
柔らかな感触は、本物と区別がつかないくらいリアリティーがあった。
彼女はそれを避けるわけでもなく、されるがままになっている。
やっぱり夢だと思った。
本物ならば、こんなこと嫌がるに決まってる。
そう確信して、僕はもう片方の手も彼女に伸ばす。
彼女の両頬を掴んで、自分の方へと引き寄せた。
夢であることの安心感が僕をこんなに大胆にさせているんだと思った。
柔らかな唇に自分の唇をそっと重ねる。
甘い吐息が漏れるのを感じて、僕はそこで初めてハッとした。
――違う!夢じゃない!
バッと彼女から勢いよく離れると、そこには現実が待っていた。