浮気の定理-Answer-
多分、清水さんには旦那さんがいて、娘さん二人の母親だという事実が、そうさせていたのかもしれない。


手に入らないのにそんな気持ちになるってことは、辛くて悲しいと頭のどこかでわかっていたから……


だから自分の気持ちに蓋をして、いい上司を演じることで彼女との接点を持とうとしていたのかもしれない。


「は……」


馬鹿だな?


夢にまで出てくるくらい、もうこんなに好きになってる。


だけど、彼女がなかったことにしようとしてるなら、僕もそれにならわなきゃならない。


今まで通り、普通に……


そうすれば、またLINEで話したりできるんだとしたら、僕はまた自分の気持ちを封印したっていい。


今、一番怖いのは、彼女が僕の前から去っていくことだ。


会えなくなるくらいなら、自分の気持ちくらい、いくらだってごまかせる。


そう決心して、気持ちを落ち着かせると、着ていたパジャマをおもむろに脱いだ。


彼女に手渡されたタオルで体を拭き、新しいパジャマに着替える。


それからサイドテーブルに置かれたトレーを自分の膝に乗せて、お粥をレンゲですくい口に運んだ。

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