浮気の定理－Answer－
いろいろ考えて、その日の夜、僕は清水さんにLINEをしてみた。


二週間ぶりのLINEは、最初にしたときよりもはるかに緊張する。


店では普通に接してくれた彼女だったけれど、果たしてLINEにも応えてくれるのかどうか、自信がなかったからだ。


この間はありがとうってことと、お礼をさせてほしいってことを文章に乗せて、思いきって送信してみる。


きっと、僕からのLINEに戸惑うに違いないと思った。


だから返信もすぐにくるなんて思わなくて……


無造作に置いたテーブルの上で、LINEの返信を知らせる着信音が響いたとき、僕は驚きを隠せなかった。


『お礼なんて気にしないでください、元気になって良かったです』


それが体よく断ろうとしてる文章だってことはわかってる。


それでも僕は諦めきれなくて、それから何度かお礼と称して彼女を食事に誘ってみた。


次の休みは火曜日だということまで告げて、自分でも驚くほど強引に。


じゃあ、お言葉に甘えてと色好い返事がきたときには、僕はそうとう舞い上がっていたに違いない。
< 121 / 350 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop