浮気の定理-Answer-
それだけで、僕は幸せだった。


彼女の笑顔が見れるだけで、本当に嬉しかったのに……




それは親睦会という名目の、いつもの飲み会だった。


ほどよく酔っ払って一次会を終えた僕らは、まだ飲み足りないという何人かで僕の家で飲み直すことになったのだ。


再び僕の家に現れた彼女は、騒いで散らかり放題の部屋を放っておけなかったらしい。


お開きになってみんなを下まで送って部屋に戻り、リビングのドアを開けたとき、彼女はまだそこにいた。


それじゃ……と帰ろうとした彼女の腕を思わず掴んでひき止めたのは、本能だったんだろう。


驚いたように僕を振り返った彼女の腕をそっと離しながら、優しく笑みを浮かべた。


いつもみたいに、穏やかに……


「コーヒーでも飲んでいってください

片付けてもらった、お礼っていうか……」


僕はずるいのかもしれない。


決して強引に誘うわけでもなく、彼女に選択させるような誘い方。


もう彼女の腕から僕の手はとうに離されていて……


断ろうと、帰ろうと、彼女が思えばそう出来るような状況にしている。
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