浮気の定理-Answer-
一瞬、ビクッと体を強張らせた彼女は、それでもまだ理性を保てているのか、やんわりと僕の手を解く。


それからゆっくりとこちらを振り返って、すぐ目の前にある僕の胸を遠慮がちにそっと両手で押しやった。


まだこのときなら引き返せたのかもしれない。


だけど僕は止まらなかった。


すぐ手の届く場所にいる彼女を手放す気にはなれなくて……


今度は正面から思いきり抱き締めた。


彼女の匂いと体の柔らかさが、僕を泥沼へズブズブと引きずり込む。


いけない恋だってわかってても、僕は彼女が欲しかった。


そして少なくとも……


彼女もまた僕に好意を持ってくれてるんだと自惚れてたんだ。


後頭部をグッと押さえて深く口づける。


最初は驚いたように抵抗する素振りを見せていた彼女も、そのうちぎこちなくもそれに応えるようになった。


甘い吐息が漏れて、僕を受け入れてくれる瞬間。


夢中だった。彼女にくっついてるいろんな肩書きは、もう意味をなさなかった。


二人を阻んでいたものの存在など忘れてしまったかのように、僕たちは快楽を求め合う。

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