浮気の定理-Answer-
ふと店の外を歩く家族連れが目に入った。


母親であろうその人が、遠慮がちにこちらを覗いていた。


「……っ!」


――清水……さん?


一年ぶりの彼女の姿。


目が……合ったような気がした。


彼女が小さく会釈するような素振りを見せる。


隣には旦那らしき男性と、小学生くらいの二人の女の子。


――あぁ……彼女はこれを選んだんだ。


瞬時にそう思った。


この家族を守るため、僕の前から姿を消したんだと……


僕の思いは、この家族には勝てなかったんだ、と諦めにも似た感情が襲う。


でも……


彼女は幸せそうだった。


そんな彼女を見て、僕はようやく自分が失恋したことを認めることが出来たのかもしれない。


ずっと会うことが出来なかった彼女が、店の前を通った意味。


私は元気だよ、幸せだよって、僕に伝えに来たんだとしたら……


窓の外にいる彼女達を眺めながら、この家族を壊さなくて良かったと思えた。


彼女がいるべき場所は、やはりあそこだったんだと……


長い間くすぶっていた彼女への思いに、僕はようやくピリオドを打てたような気がした。

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