浮気の定理-Answer-
会社で桃子の部署では、同期は他に二人だけだと聞いている。


調べるのは簡単だ。


毎月行われる同期会でのことを桃子が話していたのを思い出す。



『いつも私の隣に座るのよ?気持ち悪くて……』



確か、そう言ってた。


そんなに好きなら、桃子が手に入ると誘えば、あるいは乗ってくるかもしれない。



――まずはその男を調べてみる必要があるな?






「用意出来た?」



寝室のドア越しにこちらを覗きこんだ桃子が嬉しそうに笑う。


俺はハッとして、現実に引き戻された。


彼女の笑顔を見ていると、なんだか自分がとてつもなくひどいやつに思えてくる。


こんなに信頼しきった顔をしてる桃子を、俺は一度ならず二度までも裏切ろうとしているのだ。


心の中の葛藤を悟られまいと俺は桃子に笑顔を向ける。


それからゆっくりとベッドから立ち上がった。




「用意出来たよ?じゃあ、行こうか」




なんでもないふりをして、努めて冷静に彼女の背中に手を添える。


そして頭の中とは裏腹に楽しそうなふりをして、俺は桃子と共に水族館へと出発した。

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