浮気の定理-Answer-
木下の場合③

まだか……?


まだなのか?


昨日は興奮して眠れなかった。


隣のベッドを見ても桃子はまだ帰っていない。


月に一度ある同期会で、これまで朝帰りになることはなかった。


だから、まだ帰っていないということは、あいつが計画を実行したことに他ならない。


水落に抱かれる前にと、三日前最後の抱き納めのように、俺は桃子の体を味わった。


いつもよりも丁寧に時間をかけて、執拗に追い詰めれば、桃子も今までにないくらいに満ちていた。


正直、この体にもう二度と触れられないんだと思うと、もったいない気がしている。


けれど桃子を追い詰めるためには、今日を機に触れないことが必要だった。


俺が触れないのは、お前があいつと寝たからだと気づけば、俺に対して罪悪感を覚えるだろう。


桃子はどんな顔で帰ってくるのだろう?


俺の顔をちゃんと見ることができるだろうか?


体は最高だとあの男には伝えてある。


あの桃子が、嫌いな男に汚されてどんな顔でなくのか、俺はひどく興味があった。
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