浮気の定理-Answer-
北川の場合③

それは突然だった。


真由が、呼び出してもそれに応えることが少なくなったのだ。


『桃子』と呼ばれる親友のためなんだと、何度か断られた後でようやく会えた時、真由がそう言った。


久しぶりに重ねる体は、以前とは明らかに違っていて、心ここにあらずといった様子の真由に焦りを感じた。


執拗に攻めてみても、以前のようには満ちてくれない。


俺はその温度差を埋めようと、ますます彼女に夢中になっていった。


妻のことなど、この時は忘れていたんだと思う。


ただ、真由が自分から離れていくんじゃないかと思うと怖かった。


それは真由を抱いていても同じことで、反応の薄い彼女に不安ばかりがのしかかる。


以前は自分の方に主導権があると思っていた彼女との関係は、今ではすっかり真由の方にそれは移っていた。


焦りは焦りを生み、安らぎであった家庭に戻っても、真由のことしか考えられなくなる。


どうしたら、また真由を俺の方に向かせることが出来るのか、そればかりを考えるようになっていた。


妻が、そんな俺に不安を覚えていたことなど、気付くこともなく……
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