浮気の定理-Answer-
同じことを繰り返す桃子に、俺はただそれを黙って聞いていた。


責めるわけでもなく、それでも信じてないような顔をして。


桃子は途方に暮れたような顔で俺に許しを乞うたけど、最後まで俺は許すと言わなかった。


泣きながらごめんなさいと消え入るような声で言い続ける桃子を置いて、俺はスッと立ち上がる。


そして黙ったまま寝室へと戻り上着を手にすると、桃子の脇をすり抜けた。


玄関のドアを閉めるとき、チラッと見えた桃子の後ろ姿は、いつもの自信に満ちたそれではなく、やけに小さく頼りなげで……


少しだけ良心の呵責に苛まれたけれど、桃子が他の男に抱かれたんだと思えば、それも薄らいでいった。


ひどい男だ、と自分でも思う。


あんなに好きだった女なのに、こんな貶め方をするなんて。


けれど不思議と他の男に抱かれた桃子を見ても、嫉妬する気持ちは微塵も感じなかった。


あんなに手放すのが惜しいと思っていたはずなのに、逆に俺以外の男に触れられた体だと思うと興味もなくなっている。


それはイコール、すでに桃子に愛情はないのだと暗に物語っていた。

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