浮気の定理－Answer－
エレベーターに乗り込んで、B1Fのボタンを押す。


壁に背中をつけ寄りかかりながら、細く長い息を吐いた。


これで紗英との未来に一歩近づけた気がする。


桃子は俺に後ろめたい気持ちがあるはずだから、これから遅くなろうが外泊しようが、何も言えないだろう。


これからゆっくりと桃子を追い詰めて、離婚を切り出したときには慰謝料など請求する気も起きないくらいにするつもりだ。


真面目な桃子は、俺に別の女性がいたとしても、それが自分のせいだと思うに違いない。


自分が罪を犯したせいで、俺の気持ちが離れていったんだと、そう思わせる必要があった。




エレベーターがB1Fにある地下駐車場に着いた。


シルバーのセダンに乗り込むと、ポケットからスマホを取り出して紗英に電話をかける。


夜に行くつもりだったが、すでに家を出てしまったからだ。


何回かコール音がしてすぐに、紗英の声が聞こえてくる。




「店長？どうしたんですか？」



「悪い、やっぱり今から行ってもいいかな？」



「えっ？夜じゃなくて？」




そう聞き返す紗英の声は、驚きよりも喜びの方が強く出ているのがわかる。

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