浮気の定理－Answer－
桃子の体を知り尽くしているだけに、抱いてしまいたい衝動にかられる。


だが、あの水落も触れたんだと思うと、その気持ちも一気に萎えた。


俺の桃子への気持ちは、きっと限定品のブランドものを手に入れたような感覚だったのかもしれないと思う。


それを自分だけが持てているという優越感と満足感。


けれど他の誰かがそれを手にしていたら、その価値は急激に下がってしまう。


それと同じだ。


あの完璧で美しい桃子を手にいれた時の高揚感といったら、なににも変えがたいものがあった。


自分だけが、桃子の乱れる姿やどこが一番感じるのかも知ってるんだという喜び。


けれどひとたび、他の男にヤられてしまえば、もうどこにでもいる女と大差なくなるのだ。


それが自分が仕組んだものだとしても……



「ごめん、疲れてるんだ……」




あの桃子がここまでするのだから、かなりの勇気がいったに違いない。


それでも俺はやんわりとそれを拒否した。


背中に密着していたそれは、名残惜しげに離され、桃子のごめんなさいというか細い声と共に気配を消した。

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