浮気の定理-Answer-
驚いたことに、桃子はそれから何度か同じように、俺のベッドに入ってくるようになった。


不安と戸惑いが背中越しに感じられるほど、頻繁に。


以前は週に2回は愛し合っていたのだから、当然と言えば当然だ。


水落とのことを上書きしたいという気持ちや、俺が触れないことへの不安もあるんだろう。


それがわかっていても、ここで流されてしまっては、意味がなくなる。


紗英との未来に、桃子は邪魔なのだから。


疲れてる……とそのたびに桃子の誘いを断っていたけれど、何度目かのとき、俺はとうとう本音を伝えた。




「今はそんな気になれないんだ……

少し……時間が欲しい……」




そう言ったときの桃子の表情は今でも忘れない。


絶望を絵に描いたようなひどく傷付いた顔をしていた。


拒まれた理由が疲れたからじゃなかったことや、やはり俺があの日の朝帰りを忘れていなかったということにショックを受けたのかもしれない。


そしてもしかしたら、水落と体の関係を持ってしまったことを、俺が知ってるんじゃないかという怯えも混じってるように見えた。

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